Laputa Financial Report 2022
ラピュータ金融レポート 2022
5.今後予定されている法改正等の情報
5―2 税制改正 〜相続及び贈与・金融所得課税について〜 今年度、2022年度の税制改正では、相続税及び贈与税について大幅な改正は予定されていません。来年以降、相続税及び贈与税がどのような方向に向かっていくのか、この論点については、(政府の税制改正大綱ではなく、)与党の税制改正大綱の記載が参考になります。与党の税制改正大綱においては、相続税及び贈与税のあり方について、2つのことが指摘されていると読み取ることができます。1つは、高齢世代に資産が偏在していることは好ましくないと考え、高齢世代が保有している資産をより早いタイミングで若年世代に移転することができれば、その有効活用を通じて、経済の活性化を期待することができると考えていることです。この点からは、住宅や教育など若年世代において必要とされる資金需要を満たすための生前贈与制度、すなわち、資金の目的を明確にしつつ一定の金額まで贈与税を非課税とする仕組みについては、不公平のそしりを免れる工夫をしつつ、継続される方向を読み取ることができると思います。そして、もう1つは、相続税及び贈与税は再分配機能を果たす上で重要な役割を担っており、格差の固定化は是正されるべきであると考えていることです。現在、贈与税は、富裕層において将来の相続税の負担を軽減するために暦年贈与制度が活用されている一方において、多くの人は高い贈与税の負担を嫌い、贈与を行うことなく相続を迎えているといえます。このように、富裕層に偏って生前贈与が活用されている状況を好ましくないと捉えていることを読み取ることができ、贈与税の暦年課税制度と相続時精算課税制度のあり方が見直され、格差の固定化を防止し、資産移転時期の中立という観点からの税制改正を目指す方向性を読み取ることができます。今年、2022年は、18歳成人制が導入される年でもあり、18歳以上になれば、単独で有効な贈与契約を行うことができるようになります。子世代または孫世代への暦年贈与制度を活用した生前贈与は、早いうちに活用することが一考に資するものと考えます。 続いて、与党の税制改正大綱において留意したいこととして、金融所得課税のあり方についての言及をとりあげたいと思います。与党の税制改正大綱においては、高所得者層において所得に占める金融所得の割合が高いこと、これにより所得税負担率が低下する状況が見られていること、そして、このような状況は是正されなければならないことが指摘されています。税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要があるとの記載がなされています。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないように十分配慮することもあわせて記載されていることから、この金融所得課税の改正の方向は、高所得者層の要件を定めつつ、高所得者層については、現在の分離課税を原則とした金融所得課税のあり方を改めて、総合課税を進める方向性と読み取ることができると考えます。 ところで、今年の税制改正においては、金融所得課税についての改正は見送られたとの理解が大勢を占めていますが、実は、留意しなければならない税制改正が今年の税制改正大綱に既に盛り込まれています。現在、上場会社から受け取る配当金については、株式保有割合が3%以上の大口株主を除いて、いわゆる金融商品課税により、一定の税負担(20%)による配当金の受領が認められており、株式保有割合が3%以上の大口株主についてのみ、総合課税(累進税率)の対象とされていますが、この総合課税の対象となる株主の範囲を広げることが盛り込まれています。個人が3%以上の株式を保有している場合のみならず、その個人を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当する法人が保有する株式等の、その個人と合わせた株式保有割合が3%以上となるとき、その個人が支払いを受ける配当金を総合課税の対象とすることが定められており、2023年10月以後に支払いを受ける配当金から適用されることが予定されています<政府税制改正大綱12ページ>。上場会社から受け取る配当金が総合課税の対象にならないよう、すなわち株式保有割合が3%未満にとどまるよう、資産管理会社を活用するなどして総合課税を免れていた一部の富裕層への課税が強化されることが想定されています。このように、実は、富裕層に対する総合課税の網は広げられつつあるという状況です。 <外部リンク> ◇ 税制改正の概要(財務省) ◇ 令和4年度税制改正の大綱(財務省) *PDFファイル ◇ 令和4年度税制改正大綱(自由民主党・公明党) *PDFファイル 2022年も、皆さまの大切な資産、会社、組織をお守りすることにお役に立てますよう、弊社またLFAプロフェッショナルファームは、全力で取り組んでまいります。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご相談はお気軽にご連絡ください。
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