Laputa Financial Report 2022
ラピュータ金融レポート 2022
5.今後予定されている法改正等の情報
5―1 不動産関連の法改正 東京また都市部におけるマンション価格は大変な高水準となっている一方で、地方における土地の価格などについては、個別的要素が大きいものの、ゆるやかな下落基調が続いている地域も多く、相続した土地の中において利用価値や経済価値を見出すことができない、負の遺産となってしまっている土地も少なからず見受けられる状況にあると思います。特に売却に際して懸念がある土地は、負の財産、「負動産」と言わざるを得ません。負動産は全国的には急増傾向にあり、相続に際して登記手続を行わずに問題を先送りし、放置されてしまっている土地が社会問題化していることは皆さまもご承知の通りです。このような土地のことを、近年では、「所有者不明土地」とも呼んでいますが、所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関する法ルールは、今後、数年かけて改正されることが予定されています。ここで、不動産関連の法改正について、ご案内させていただきます。 不動産に関する法改正の1点目は、不動産登記制度の見直しです。これまで任意とされていた相続登記の申請が義務化されます。この法改正は2024年4月から施行される予定です。この法改正により、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならないことになります。正当な理由がないのにこの義務に違反した場合には10万円以下の過料を適用することも予定されています。そして、相続登記を義務化する一方で、より簡易に相続登記の申請義務を履行することができるように、新たに、「相続人申告登記」なる制度が設けられる予定です。この相続人申告登記制度は、これまでの相続登記とは異なるものですが、とりあえず法的な義務を果たすことができるように、簡易に、相続人の申告による登記が実施できるようになることが予定されています。これらの法改正の他、2026年4月までの間に、「所有不動産記録証明」として、ある特定の方の所有不動産の一覧リストを発行してくれる制度が始まったり、住所変更の登記の申請を義務化するともに、本人の了解のもと、住民基本台帳ネットワークと不動産登記のシステムを連動させて、法務局が職権で住所変更の登記を行う仕組みも導入される予定です。これまで、不動産登記制度は、自分の財産をしっかりと守りたいと考える人が任意に申請すればよいという位置付けの仕組みでしたが、所有者不明土地の解消に向けて、より公的な仕組み、義務を課すという側面が大きくなり、法務局を通じて、国による土地の所有関係、権利関係の管理が進むようになると理解することができると思います。 不動産に関する法改正の2点目は、相続土地国庫帰属制度の創設です。地方を中心として、相続したものの利用予定のない土地が増加しています。通常の手続きで売却対象になるような、利用価値や経済価値のある土地であればよいのですが、そうではない原野や山林を相続するということも考えられます。そのような相続人においては、相続した不動産はまさに負の財産といわざるを得ず、管理や危険の負担のみを負うことになってしまいます。このような状況も所有者不明土地の発生要因になっていることから、この法改正により、相続により土地の所有権を取得した相続人が、法務局に申請することにより、相続した土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が新たに創設されることになりました。この法改正は2023年4月27日に施行される予定です。ただし、どのような土地でも国が引き取ってくれるというものではなく、通常の管理または処分をするにあたって過大な費用や労力を必要とする土地についてはこの制度の対象外となることが予定されており、法務局の職員が書面審査や実地調査を行うことが予定されています。この要件の詳細については、法律が施行されるまでの間に、法務省令で別途定められる予定です。また、この制度は、国に対してお金を納めて、土地を国庫に引き取ってもらうという考え方の制度です。この制度の申請の際には審査手数料がかかることが想定されており、さらに、向こう10年分の土地管理費相当額を負担金として納付することが予定されています。この負担金の金額や算定方法についても、今後、この法律が施行されるまでの間に、法務省令で別途定められる予定です。 そして、不動産に関する法改正の3点目として、2023年4月から、民法の一部が改正されることが予定されています。この法改正においては、遺産分割に関する新たなルールの導入が予定されています。遺産分割がなされずに長期間放置されることが所有者不明土地をひきおこす要因になっているとの理解から、相続開始後10年を経過した後については、具体的相続分による遺産分割を行う法的利益が失われ、法定相続分または指定相続分(遺言による指定)に従って画一的に相続されるようになることが、この改正法において予定されています。具体的相続分というのは、個別の事情を考慮した遺産分割のことであり、例えば、生前に贈与を受けていたことであるとか、生前の療養看護について特別な貢献をしていたことであるとか、具体的な事情を考慮して相続分を算定する考え方であり、相続開始後10年間放置してしまうと、このような具体的相続分を考慮した遺産分割はできなくなるということです。 負の財産、「負動産」を次の世代に残してしまうことのないように、不動産、特に土地については、その状況確認を行い、利用または活用の予定の乏しい不動産については、売却を検討される準備も必要ではないでしょうか。 <外部リンク> ◇ 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(法務省) <弊社ウェブサイト関連情報> ● 不動産価格指数(弊社作成グラフ)をご覧いただけます ● 実家の相続について ● 不動産の見方に関する研修 2022年も、皆さまの大切な資産、会社、組織をお守りすることにお役に立てますよう、弊社またLFAプロフェッショナルファーム は、全力で取り組んでまいります。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。ご相談はお気軽にご連絡ください。
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